俺が高校生の時の話だ。人通りの多い町を歩いていると、70歳くらいのおじいちゃんがDQN4、5人に絡まれていた。どうやらおじいちゃんが歩いている時にDQNにぶつかってしまったらしく、それを理由にDQNたちがしつこく責め立てている様子だった。
おじいちゃんは「ごめんよ、すまなかったねぇ」と丁寧に謝っていた。しかし、DQNたちは「土下座せんかい!」と調子に乗り、さらにエスカレートしていた。おじいちゃんは仕方なくその場で土下座し、「これでいいかね?いやあすまなかった、すまなかった」と繰り返し謝っていた。
その光景を見て、俺はあまりにもひどいと感じ、止めに入ろうと決心した。しかし、その瞬間、後ろから50歳くらいのいかつい男が割って入ったのだ。
「会長!大丈夫ですか?しっかりしてください!」とその男はおじいちゃんに駆け寄った。どうやら、そのおじいちゃんはやくざの頭だったようだ。突然の出来事にDQNたちの顔が一気にこわばり、恐怖で固まっていた。
「お前らなにさらしとんのじゃコラァ!!」その男がDQNたちに向かって怒鳴りつけると、DQNたちは半べそをかきながら震えていた。しかし、おじいちゃんはその男を優しく止め、「いいって、いいって。まだ若いんだから」と笑顔で言ったのだ。
結局、おじいちゃんとその男はその場を去って行ったが、DQNたちはしばらくの間、その場から動けなかった。俺はその光景を見て、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉の意味を改めて感じた。
この出来事は、ただの一幕ではなく、深い教訓を残してくれた。おじいちゃんの優しさと強さ、そして真の力を持つ者の寛容さを目の当たりにしたのだ。彼のような人物が、どんな逆境にも冷静に対処できる力を持っているのだろうと感じた。
その後、俺は町で再びDQNたちを見かけることがあった。彼らは以前とは違い、すっかり大人しくなっていた。恐怖の体験が彼らの心に深く刻まれたのだろう。
町中での振る舞いも以前とは全く違っていた。
後日、俺は地元の人からおじいちゃんの話を聞いた。彼はかつてこの町で一目置かれる存在だったという。やくざの世界での頭として知られ、若い頃から数々の伝説を残してきた。しかし、年を重ねると共に、その力を表に出すことなく、静かに町の人々を見守る存在となっていた。
この出来事は、俺にとって忘れられない経験となった。人は見かけによらず、真の力を持つ者はそれを誇示することなく、静かに人々を守る存在であることを教えてくれた。おじいちゃんのような強くて優しい人物がいることを知り、俺もそんな人になりたいと心から思った。
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